第29回読書会blue開催レポート

令和4年2月20日(日曜日)9:30~ 高志の国文学館研修室103にて[読書会blue]第29回「雪国」開催しました。今回も多くの方に参加いただきました。

課題本は川端康成の「雪国」。読書会blueでは2回目の課題本です。前回の様子はこちら

 

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」

 

有名な出だしで始める本編の中からは当時の越後湯沢の情景が感じられます。

 
今回は次節柄もあり、芸者とのつかず離れずな関係から見えてくる心情、繊細な描写が美しい課題本を今回は選びました。

 
川端康成の自然描写の美しさ・繊細さについてはもちろん、学生時代に読んで久しぶりに再読された方も多くいらっしゃいましたよ。

********************
参加者の皆さんの感想をいくつか紹介します。

 

島村の駒子が1年に会えるのはわずか。だからこそ愛が成熟する。妻子ありながら関係を持つ島村は勝手で許せない。唇を「ヒルのよう」という表現するのは川端康成らしさ?

 

色っぽい表現があえて寸止めになっているのが美しい。新潟の雪は白銀で北陸ほど湿っぽくない、清潔を感じる雪景色。それが文章で表現されている。

冒頭文にすごみのある1冊。あえて直接的な表現でないのが読み手の想像を広げてくれる。

 

日本人の心の精髄を表現している。直接的な表現しないところに奥ゆかしさを感じる。男と女の恋心がクローズアップされているけど切なくてもの悲しい、心の器量を感じさせる。繊細な描写。

 

多くの文豪からも高く評価されているが、個人的にはもやもやする小説。男女で感じ方が違う印象。川端康成のアーティストさを感じる。

雪国で懸命に生きる駒子の生き方は悲しくて美しい。途中読んでいられなくなったが、徒労という言葉で駒子に親近感が沸き、夢中になって読んだ。徒労は誰しもが持っている人生のエッセンスのようなもの。

 

「徒労だね」という言葉に島村が自分を重ねている。島村自身は悪い人ではなく、軽い思いで駒子には接していないのでは。葉子から見る駒子はどうなのだろう。島村が葉子になびく様子はリアルだった。

 

日本の情景の美しさ、美しい風景を感じさせる文章。季節感がでており、小説でしか書けないものを表している。俳句と小説がつながっている印象。三味線のシーンには身を売るだけではない駒子の美しさが表現されている。天の川が効果的に使われている。

 

冒頭の「夜の底が白くなった」という表現が好き。色の使い方、色を使った表現の仕方が素敵。唐突な終わり方をするが、2人はこういう終わり方しかできなかったのでは。

 

自然に近いキレイな表現。駒子メインなのに葉子が禅語に登場するのはなぜか。

冒頭の文章は別世界への入り口。トンネルを抜けて別世界へやって来ている。
妻と子がほとんど登場しないのは日々の営みに興味がないからでは。
 

駒子は感情が激しい。島村はその場の美を楽しむタイプな印象。
冒頭のガラスの表現は鏡を意識した文章表現になっている。
駒子は本能的に惹かれるのを感じ取っていた。華やかなものだけではない、内面に惹かれた。島村はアウトサイダーの視点。あくまで旅人。島村から見た駒子は非日常の愛人。
駒子と葉子、2人とも苦しみ・悲しみの体現者。相反する関係。
場面がガラっと変わる雪国の縮の話に浄化された。

 

ほかには

川端康成がノーベル文学賞をとれたのは日本の情景の美しさ、美しい風景を文章で表現しているからではないか

など、時間いっぱいまで語り合いました。

 

今回は男性・女性交えての読書会でしたが「雪国」に関してはあえて男性のみ・女性のみの読書会にしても盛り上がる課題本と個人的に感じました。

 

小話は

・越後湯沢について

・雪国は雪国ではなかった!?

を紹介しました。

 

「雪国」というタイトルは単行本になる際につけられたもので、当初雑誌に掲載されたタイトルは異なるものでした。書き始めた頃、結末は決まっておらず、自身の経験も織り交ぜながら書き進めた小説です。今回は併せてモデルとなった芸者(松栄)についても紹介しました。前回の小話はこちら

参加者の皆さん、ありがとうございました!

 

次回は2022年4月17日(日曜日)9:30~

課題本は井伏鱒二の「駅前旅館」

まるで漫談のような口調で語られるのは宿屋稼業の舞台裏。以前課題本として取り上げた山本周五郎の「青べか物語」と年代が近く、読みながら昭和30年代の情景を感じられる1冊です。

皆さんの参加をお待ちしています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です