第49回読書会blue開催レポート


令和7年8月17日(日曜日)9:30~ 高志の国文学館 研修室103にて[読書会blue]第49回「古都」開催しました。

 

課題本は川端康成の「古都」

読書会blueで川端康成を取り上げるのは「雪国」以来2回目。京都の名所をはじめ祇園祭など行事も取り上げられており、読み終わる頃には思わず京都に思いを馳せてしまう1冊です。

 

読書会blueでは毎回課題本に関する小話を紹介しています。

 

今回は

・川端康成について

・「古都」創作秘話

を紹介しました。

 

川端康成は大阪出身。中学3年のときに孤児となり、その後は母の実家に引き取られ、親戚の世話になりながら東京帝国大学へ進学。帝大1年の1921年に石浜晋作、鈴木彦次郎らと第六次「新新潮」を創刊。第2号に「招魂祭一景」を発表したところ、菊池寛らに好意ある批評を受けたことがきっかけとなり、商業誌から原稿依頼になったことから当時学生ながら商業作家として文壇へ進出することとなります。

「雪国」「伊豆の踊子」など著名な作品は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

1968年に日本人初のノーベル文学賞受賞。1972年仕事部屋にてガス自殺を遂げています。

 

川端康成は新人発掘の名手としても優れており、その批評眼に認められて世に出た作家には堀辰雄、北条民雄、岡本かの子、三島由紀夫などがいる。鋭い審美眼で、その数々の茶器や陶器、仏像、俳画や日本画など古美術品の収集家として有名でそのコレクションは美術的価値も高いです。

 

 

次に「古都」についてご紹介します。

「古都」は1961年10月8日~1962年1月23日まで朝日新聞で連載。かねてより京都にささげるべく物語を書きたいという気持ちがあったことから、前年の連載を完結させたのち、取材と執筆のため京都・下鴨の泉川御殿(泉川亭)と言われた西陣帯会社の所有の社宅で執筆しました。登場人物の京都弁も校正が入っているだけでなく、京都各地の名所や史蹟、年中行事が盛り込まれており国内だけでなく、海外でも評価が高いです。

 

連載終了後に掲載されたあとがき(「古都」を書き終えて)には「古都」を書いている間も眠り薬を用いており、眠り薬に酔っていつつないりさまで書いた、眠り薬が書かせたようなものであったろうか、と語っています。

初版刊行本の中には東山魁夷「冬の花」(北山杉)が掲げられています。これは1962年、川端康成が文化勲章受章時のお祝いとして描いたものであり、画題は「古都」の終章の見出しにちなんでいます。

参加者の皆さんの感想を紹介します。

 

千重子と苗子をはじめとする登場人物について、京都の描写から過去に見たり訪れた場所を想起した方も多くいらっしゃいました。

 

 

・美しい、鮮やかな表現がパッと出てくる

 

・美しさの中に寛容さがある中に突然殴る描写→美しい古都のなかでポイントとなっている

・過去に行った京都を思いだした

 

・千重子と苗子は芯がとても強いところが共通している

 

・(苗子)父のことは詳細に話すが母の事は言葉を濁しているのはなぜ?

 

・文章が女性的でもあり男性的でもある

・昭和30年代前半の京都へ行ってみたくなった

 

・もし眠り薬を飲んでいなかったら展開変わっていたのでは

 

・苗子はプロポーズされても断るだろう

 

・(千重子と苗子)本心では誰が好きなのかはっきりしない


・お店を守るため結婚することが当時当たり前だったのでは

 

・芸妓さんが官能的

 

・(全体的に)キレイなところ、表面的にキレイに見えるものを集めたもの

 

・テレビドラマを見てる感じで引き込まれていく


・暴力と芸妓以外、ぎょっとするところがない

 

・昔と今の呼び方の違い、言葉の響き方の違いがあるのでは

 

・千重子が主柱。周りのキャラが立っている、ひきつけている

 

・会話中心に話が進んでいるからか、会話の中心に余白がある

 

・京都の風物、文化を組み合わせている、誰にでもヒットしそう

ほかには

 

・この物語の主人公は人ではないのではないか

 

・川端康成と眠り薬について(眠り薬を使っていたからこそこのようなキレイな展開になったのではないか等)

 

などをはじめ、川端康成の他作品との比較やテレビドラマを見ているような描写力についてなど、参加者それぞれが参加者の感想を聞いてからさらに内容を深堀りする時間となりました。

参加者の皆さん、ありがとうございました!!

 

次回は2025年11月23日(日)9:30~

課題本はモーパッサンの「女の一生」

モーパッサンは2回目の課題本です。

皆さんの参加をお待ちしています。

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