第41回読書会blue開催レポート

令和6年4月21日(日曜日)9:30~ 高志の国文学館 研修室103にて[読書会blue]第41回「華氏451度」開催しました。

課題本はレイ・ブラッドベリの「華氏451度」

 

ジャンルはSFですが、その世界は現実世界と変わりがないように感じられます。

今回は参加者の本の感想に加えて昨今の出版不況や書店の減少について感じることなど多様な話題が飛び出す時間となりました。

 

読書会blueでは毎回課題本に関する小話を紹介しています。

 

今回は

・レイ・ブラッドベリについて

・「華氏451度」創作秘話

を紹介しました。

 

レイ・ブラッドベリは多くの著作がありますが、過去の独立した短編等を組み合わせて編集し、新しい長編を生み出したりもしていました。今回の課題本である「華氏451度」も当初は「ファイアマン」という短編で執筆しましたが、当時は評判にならず再度加筆・編集・タイトル改題を経て現在の形になりました。また、図書館好きとしても知られており「華氏451度」も図書館の有料タイプライターで執筆したとのちに本人のエッセイで語っています。

ほかには「華氏451度」の世界観で参考にした時代背景としてナチスドイツが行っていた焚書行為や戦後の赤狩りについても内容をかいつまんでお話しました。

参加者からの感想を紹介します。(ネタバレ多数/一部抜粋しています)

 

・ミヒャエル・エンデの「モモ」の世界観に似ている

 

・フェーバーとのやり取りが刺さる

 

・人の意見は二極化すると対立する。違った意見を求めないことは危険

 

・究極の伝承方法は暗記。ブラッドベリは口承・口伝えを知っていた

 

・比喩表現にひねりがある、独特

 

・「ラーゲリからきた遺書」など他の著作の想起させる場面も多いと感じた

 

・クラリスの祖父の話がドキっとした。現代も小説の世界のように効率化を求めていると感じる

・ベイティーとモンターグとのやり取りは「動かなくても動いているような」感覚。痛烈な批判は現代人に突き刺さる

 

・本は考えるきっかけになる、だから燃やす

 

・ネットの世界は(自分が考えたわけではないのに)考えたような気になってしまう

 

・ベイティーは死にたがっていた?生き残りたかった?

 

・寓話的なところがある。教訓的なことを書いているのでは

 

・1部はよくわからない印象だったが、2部から面白くなってきた

・当時アメリカのテレビは現在ほど普及していなかったが、普及していない中でも著者は危機を感じていたのでは。ブラッドベリ自身に先見力があると感じる

 

・本を読みながら考える・想像する力。本には価値があり必要なもの。ブラッドベリはそれを言いたかったのでは

 

・自分の手で何かを残すことは使命みたいなものではないか

 

・もし時代が違えば自身が昇火士(ファイアマン)になりえたかもしれない

 

・多様性の否定や言語統制のある世界観から今後現代がどのような形でいくのか考えさせられた

 

・比喩表現が毒々しいと感じた

 

・芸術や文化を圧殺していく社会で一番困るのでは人間では

 

・ベイティーの言葉は文学的

 

・かつて情報を書けるのは一部の人だけだったが、現代は活字よりネット。誰でも書けるからこそ正確性が問われる

 

・ベイティーとモンターグのやり取りは禅問答のよう

 

・ベイティーは死ぬかもしれないのにあえて煽るような言葉を言う、逆説的。世の中に反発している

・二極化している社会、一般大衆は会話と言えない言葉で貧しい会話をしている。ポルポトなどを想起した

 

・戦争がすべてをリセットさせることを期待しているが、納得できない

 

・口伝えで全てを遺すことは難しいのでは

 

・情報を持っていることは安心感になる、これをどう使うかが求められる

 

・フェーバーはずるい、造詣が深い。それゆえ自分で死を遂げられない

 

・モンターグは炎を焼き尽くす熱さしか知らなかったが、ラストでは昼のぬくもりを感じられている

 

・とても読みにくいと感じた

 

・これはグレンジャー目線で書かれた本ではないか

 

・キリスト教を知っていたらもっと楽しめたかも

 

・アメリカは日本以上にテレビ社会、テレビは不安を忘れさせてくれる。現実を直視したくないのでは

・紙は燃やされても知識は奪われない。かつてのユダヤ人の迫害にもつながるのでは

 

・登場する本は哲学的なものが多い

 

・(本の世界観が)虚構

 

・他の方から刺激与えられると頭で考えられなくなる。受け身で知ったような気持ちになる

 

・要所に皮肉が入っている

 

・(著者は)本以上に自分の頭で考えることをしなくてはいけないと言っているのでは

 

・読了して自分ができることは読書の良さ・楽しさを伝えることではないかと感じた

 

・本を読まないと権力のある人たちが得をする、愚民政策につながるのではないか

ほかには

 

・冒頭のメッセージについて

 

・ラストの旧約聖書の言葉がユダヤを想起させる意味

 

など本の内容をさらに考察したり、他の書籍との関連した箇所についてなど多種多様な話題が多く挙がりました。主人公が本を燃やす仕事をしているということから本を読むことの意味やあり方、多様性について考えを深めた方も何人かいらっしゃいました。いろいろな考えや視点を知ることができるとより本の世界が深まりますね。

参加者の皆さん、ありがとうございました!!

次回は2024年6月9日(日)9:30~

課題本は安部公房の「箱男」

今年映画も公開予定となっている1冊です。

皆さんの参加をお待ちしています。

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