第40回読書会blue開催レポート

令和6年2月23日(金曜日・祝日)9:30~

高志の国文学館 研修室103にて[読書会blue]第40回「愛と死」開催しました。

課題本は武者小路実篤の「愛と死」

 

「お目でたき人」「友情」に次ぐ3部作と言われていますが、内容自体に繋がりはないのでこちらの本のみでも楽しめます。

今回は参加者の本の感想に加え、「宙返りの意味」など本の内容を踏まえて著者の真意を探る時間となりました。

 

読書会blueでは毎回課題本に関する小話をお話しています。

 

今回は

・武者小路実篤について

・「愛と死」を書くまで

を紹介しました。

 

武者小路実篤は「新しい村」を創設したことでも有名です。今回は武者小路実篤の生涯について大まかに説明したのち、白樺派を築いたあとから「愛と死」の出版に至るまでを出来事を紹介しました。
白樺派は明治後期に文学の新しい潮流として注目されました。しかしながら関東大震災による雑誌「白樺」の終刊、プロレタリア文学の台頭などから影りを見せていきます。武者小路実篤自身も著作を発表できず(本人曰く失業時代)著名人の伝記や評伝で生活費を稼いでいました。「愛と死」は失業時代を乗り越えたのちに発表された作品です。内容には欧州旅行へ行った際の差別体験が作品の一部に引用されていることなども紹介しました。

参加者からの感想を紹介します。(ネタバレ多数/一部抜粋しています)

 

・序盤の「僕は忘れない」の言葉が印象的

 

・純粋な人、著者自身が村岡の気持ちになって書いている

 

・夏子を可憐と表現したのが素晴らしい

 

・ラストの死の表現は著者が54才だから書けたのでは

 

・当時の男女差を感じる場面もあるが、村岡は夏子の個性を尊重している

 

・表紙裏のあらすじで内容知っているからこそ感情移入できた

 

・明るい表現からも後の出来事を匂わせている

 

・夏子の死より家族は村岡のことを心配している様子にモヤっとした

 

・比喩表現は直接的なものより、時間を具現化した表現が多いように感じた

 

・ページ数にしては深堀りできると感じた。読み継がれる理由がある。

 

・描写が素敵でわかりやすい
 
・夏子の死の場面ではもらい泣きした

 

・クセがなく読みやすい

 

・死神→スペイン風邪など具体的な敵がいないからこその表現

 

・心の準備のない「死」は辛い

 

・苦しみに苛まれる中で母の愛に気づけたのは途切れず愛されていたからでは

 

・離れているからこそ言える言葉が2人にはある。すごく良い恋愛をした

 

・丁寧でわかりやすい文章、最近では能登地震もあり深く感じられた

 

・登場人物に揺るぎない自信を感じる、他の著名人ほど苦しんでいる様子が全くない

 

・ラストの文章で作品の不変性を感じた

 

・夏子は村岡のどこを好きになったのかよくわからない

 

・夏子は男にとって都合よい女。キレイ過ぎてリアリティがない

 

・ベタな筋書であまり面白くなかった
 

・宙返りは伏線、最初から宙返りと死を結びつけて書くつもりだった?

 

・夏子の死に直面して母の愛を思い出すなど言葉のつながりが面白い

 

・野球で例えるとストレートのような良い恋愛小説、童話のようにも感じられた。当時の時代背景もあるのでは

 

・夏子が生きていたらどのような結末になったのだろう

 

・結末を分かっているから悲しい、頭の隅にちらついた

 

・過去の失恋が54才まで影響を与えている、この時代だからこそ書けたもの

 

・(当時の)西洋に対する憧れ、対抗意識があったのではないか

 

・時間の空白があるが故に辛くなる、時差が巧妙

 

・「運命」が作者のテーマではないか

 

・(夏子のことを)忘れない気持ちも大切だがほかの人を好きになったり、前向きになればいいのでは

 

・期間が短いからこそ中身の濃い、理想のつきあい方をした

 

ほかには

・現代の恋愛小説との違い

・宙返りについて

など本の内容をさらに考察したり、そこから派生して生成AIについてなど多様な話題が挙がった時間でした。特に「宙返り」の考察については、何人もの方が自身が気付かなかった新しい視点や考えに触れることができ、より理解が深まった印象でした。

いろいろな考えや視点を知ることができるとより本の世界が深まりますね。

参加者の皆さん、ありがとうございました!!

 

次回は2024年4月21日(日)9:30~

課題本はレイ・ブラッドベリの「華氏451度」

本を読むことが禁じられている世界が舞台です。

読書会blueでは珍しいSF小説!!

皆さんの参加をお待ちしています。

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