第39回読書会blue開催レポート

令和5年12月17日(日曜日)9:30~

高志の国文学館 研修室103にて[読書会blue]第39回「異邦人」開催しました。

課題本はカミュの「異邦人」

カミュの小説デビュー作となります。

今回は本の内容から「ラストの「しるし」とはなにか」、「異邦人が読み継がれる理由」など話題は多岐にわたり多くの意見や考察が話題に挙がる時間となりました。

 

読書会blueでは毎回課題本に関する小話をお話しています。

 

今回は

・カミュについて

・「異邦人」創作秘話 ~「異邦人」は「幸福な死」から始まった~

を紹介しました。

 

カミュは小説「ペスト」が非常に有名ですが、実は作家以外にもジャーナリスト、劇作家など幅広く活躍していた人物です。今回はカミュの人物像について全体の概要と「異邦人」が書かれた当時の状況を中心に紹介しました。「異邦人」創作秘話からは、原作となった「幸福な死」の出版断念、カミュの「手帖」から創作をさらに深めることとなったエピソードなどを紹介ししています。

 

「幸福な死」や「手帖」はカミュの死後出版されたもので、日本語訳もあります。気になる方は読んでみてください。

参加された皆さんの感想を紹介します。(ネタバレ多数/一部抜粋しています)

 

・自身の母を思い出した。

・太陽がまぶしかったからは人殺しの理由になるかもしれない。

・あいつはおかしいと死刑にもっていかれる。このようなことは日本のあちこちにあるのではないか。

・司祭は自分の生き方に自信があるからキレるのでは。

・第2部で後付けで「太陽のせい」と言っている。本当に太陽のせいで殺していない。

・ムルソー自身が話していないところで話しが進んでいる。

・立ち止まるところがムルソーの正直なところ。

・司祭に対し細かいところで「嫌です」という。

・「異邦人」とは変わり者、個性的のような否定的なイメージ。

・第1部は自分事なのに他人事のよう。第2部では現実世界に対する情愛が見られる。これまでは人がどう思おうがどうでもいいと思っていたムルソーが「泣きたい」という気持ちを口にしている。

・ムルソーが死ぬということを分かったうえで読んだら面白かった。死人の手記のよう。

・第1部のことを比べながら第2部を読むと違う小説を読んでいるようだった。

・死刑制度について考えさせられた。

・「異邦人」というより「異端人」。ムルソーが当時の価値観に翻弄されている。

・司祭を受け入れていたら減刑になったかもしれない。

・(ムルソーを)変人とは感じなかった。思慮深い人。哲学的思想を感じる。

・ムルソーは他人に対して合わせない、だから誤解される。

・一部のムルソーを理解できる人に対しては突き放すわけでもなく、かといって合わせるわけでもない。

・自分の本当に言いたいこと、思っていることを貫く難しさを感じた。現代の一連の報道にも余地はあるのでは。

・冒頭の文章が印象深い本。ママンの語幹のよさ、フランスの世界観を感じる。

・ムルソーがガラスを通して周りを見ているよう。

・なぜ4発も銃弾を撃ち込んだのか→一般的に考えられない殺意や憎悪を取るけど本人にはない。第2部でもムルソーをどういう人間か弁護士たちが理解しようとしたが結局無理。

・ムルソーのようなところは人間大なり小なり持っている。

・題材が古びていない。物語の顛末をたどるようなことがあるかもしれない。

・特定の部分だけを切り取られてしまい、誤解を受けてしまう。自身の経験を思い出した。ムルソーのことは自分のことのよう。

・第2部はムルソーの心情にコミットした。点々とした読み方ができる本。

・上司からお母さんの忌引きに関して不満を言われる場面。毎日淡々とやっていると強く言うことに対して慣れてくる。

・機械的。ムルソーは悲しいんだけれど、感情の出し方を忘れてしまっている。

・4発の銃弾を撃ち込んだ理由→抑えていたものが外れたから。撃って解放されたところがあったのでは。

・ラストはムルソー自身が世界に近づけた、心を開けた。

・処刑は悲劇的なことだが、処刑される本人は何か放たれるのかもしれない。

・司祭とのやり取りでは溜まっていたものが爆発した。

・新潮文庫表紙裏に書かれているあらすじと内容が一致しないと感じた。

・第2部はムルソーがはめられていく印象。第1部と全然違う。

・ムルソーは宗教に染まらない、現代的な人。神様を信じないし、悪を感じない。そのせいで悪い友人に流されてしまった。

・手紙の代筆の方が母の死より重いのでは。

ほかには

 

・タイトルである「異邦人」とは

・キリスト教が広まったワケ

 

など、本の内容から一歩先の事柄、さらにはイスラエルとパレスチナの戦争まで多くの内容が飛び出した時間でした。今回は参加者からの考察の時間が普段より多く取れたこともあり、各々が積極的に発言していました。

現代まで読み継がれているということは、多くの人の心をつかむ「なにか」があるということ。本のなかにある「なにか」を考察すると、私たちが大切にしたい思いや経験、考えを知るきっかけになるのではないのでしょうか。

参加者の皆さん、ありがとうございました!!

 

次回は来年2024年2月23日(祝日)9:30~

課題本は武者小路実篤の「愛と死」

著者も涙しながら執筆するほど純粋な世界観は私たちに何を教えてくれるのか。

こちらも現代まで読み継がれる名著のひとつ。

皆さんの参加をお待ちしています。

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