第43回読書会blue開催レポート


令和6年8月25日(日曜日)9:30~ 高志の国文学館 研修室103にて[読書会blue]第43回「野火」開催しました。

 

課題本は大岡昇平の「野火」

 

太平洋戦争末期のフィリピン:レイテ島が舞台となっています。

 

 

今回の読書会をきっかけに再読された方、過去に見た映画版「野火」を想起しながら読み進めた方もいらっしゃいました。

 

読書会blueでは毎回課題本に関する小話を紹介しています。

 

今回は

・大岡昇平について/「野火」創作の背景

・舞台となったレイテ島の戦いについて

 

を紹介しました。

「野火」の状況は大岡昇平がレイテ島の俘虜収容所で知りあった十六師団や泉兵団の兵士から聞いたものが参考となっており、小説中の事件等はフィクションです。大岡昇平は「野火」について、自身の戦争経験から自分の感情の赴くままに1つのフィクションを作り出すことができたのはたいへん幸福であったと書き残している一方、自身が乏しい資料、俘虜からのあやふやな聞き書きによってレイテ島の陸上戦闘の詳細について誤った情報を伝えてしまったことを「罪」とも感じており、これが後の著作「レイテ戦記」執筆のきっかけとなっています。

 

大岡昇平自身の従軍経験については「俘虜記」をはじめ他全集に多数書き残していますので、興味ある方は見てみてください。フィリピン:ミンドロ島が舞台となっています。

 

 

 

参加者からの感想を紹介します。(ネタバレ多数/一部抜粋しています)

自然描写の美しさやキリスト教など宗教観について、戦争に関することなどの話題が挙がりました。

 

 

・理解しようとしたけど辛い。けどこれが現実だろうと思う

 

・レイテ島の描写が印象的

 

・妻と精神科医との関係について主人公がどう感じたのだろうか

 

・(描写から)唇を観察している

 

・自然描写が美しい

 

・緻密・論理的に書いている

 

・戦争という極限状態で「人間とは何か」を問いている

 

・ラストの精神病院や現代社会についての描写には戦後社会の批判も含まれているのでは

・ダビデの言葉に宗教観を感じる

 

・主人公は終始野火を追いかけていた、野火とは人に結びつくものではないか

 

・命を落とすかもしれないけど、人を求めているところがある

 

・見られているという感覚が人間を超えた大いなるものの存在を差している

 

・田村の行為を押しとどめたのは神なのか?人がわずかに残した良心なのか?

 

・将校のセリフが印象的

 

・狂人日記は戦後レジームからの脱却か

 

・自分以外は全部敵、死と生が交互に行き来している

 

・近代の戦争の方が残酷

 

・ラストの言葉には野火の意味が詰まっている

 

・人間性がはく奪されている、飢餓のような状況になると人間はそうなってしまう。そういう人に人はなりうるもの

 

・人間を追い込むことが戦争ではないか
 

・左手に神の倫理が入っている

 

・自然描写 1人称じゃなく自然自体が主役の文体

 

・人肉は今の感覚だとタブーだが、歴史的にはあった(中国文明など)

 

・戦争をしないためには法律などを作り、戦争が起きにくくなる状況を作るしかない

 

・どうして戦争は起きてしまったのか、知ることは大切

 

・自国を守るために武力や抑止力となるものは必要

 

・登場する神は「お天道様」に見られている感覚に近いか

 

・極限下だと法律・道徳・倫理は関係ない。人間の尊厳が守れるか、立ち止まることができるかが問われる

 

・田村の「人間として生きていきたい」の言葉が強烈に残った

 

・宗教について分かったらより深まるかも

ほかには

 

・大岡昇平と縁のあった人物について(中原中也、小林秀雄など)

・戦争について(戦争をする意味や現在も続いている争いについて)

 

など、現在も続いているウクライナやガザ地区に戦争についてや主人公:田村が狂人になってしまった理由など本に関する考察から現在の世界情勢や宗教についてなど多彩な話題が挙がりました。参加者の意見や考えを聞くことで自分では気づかなかった新たな気づきや視点を発見でき、より本の世界を楽しむことができますね。

参加者の皆さん、ありがとうございました!!

次回は2024年10月27日(日)9:30~

課題本はフランソワーズ・サガンの「悲しみよこんにちは」

blueでは2回目の課題本です。

皆さんの参加をお待ちしています。

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