第36回読書会blue開催レポート
令和5年6月25日(日曜日)9:30~ 高志の国文学館 研修室103にて[読書会blue]第36回「悪童日記」開催しました。
課題本はアゴタ・クリストフの「悪童日記」
舞台は1944年第二次大戦中のハンガリーの国境付近の村。固有名詞が最後まで登場しない簡潔な文章から見えてくる狂気。明るい内容とは言えませんが読了すると誰かと語りたくなる、続きが気になってしまう、そんな本を選んでみました。続編を読了して参加された方も何人かいらっしゃいましたよ。
読書会blueでは感想を話し合う前に課題本に関する小話を紹介しています。
小話は
・アゴタ・クリストフについて
・舞台となった1944年当時のハンガリーとハンガリー動乱について
を紹介しました。
「悪童日記」には著者:アゴタ・クリストフの経験が多く盛り込まれています。今回は著者についてはもちろん、アゴタ・クリストフが亡命するきっかけとなったハンガリー動乱について、その後亡命先のスイスでの言語習得についてなどご紹介しました。アゴタ・クリストフの半生についてはエッセイとして出版されていますのでぜひ読んでみてください。
読書会では参加者それぞれの感想はもちろん、ラストの場面での考察、ネタバレしない程度の続編の話など多彩な話題が飛び出す時間となりました。大人のグリム童話のように感じた方も多かったです。
参加者からの感想を紹介します。(ネタバレ多数/一部抜粋しています)
・双子だからこそ厳しい状況を乗り越えられた。
・まるで昔話、グリム童話のような印象。人物が強烈。生きるためにそうするしかなかったのかもしれないが、受入れ難い。
・固有名詞が出てこない。双子は悪なのか、神なのか。不健全な方に成長している。常識がズレる。
・細かい描写がなく、骨組みのみある。まるでグリム童話のよう。フランス語が母語ではないからか。
・いたいけな子どもの反面、大人たちの話を盗み聞くしたたかさがある。なかなかな人たち。いろいろな状況に耐えられる人を自分たちで作っている。
・牽かれて行く人間たちの群れの章では双子、おばあちゃんの人としてのまっとうさを感じる。
・残酷なことをしないと生きていけない状況。生き伸びるためにやっていると思うとある意味まっとうなのかもしれない。
・まさに「ゴルゴ13」の世界観だと思った。シリアスなんだけれども重くならない。
・どこを開いても俳句のようなリズム感のある文章
・読みやすい印象。人物と性癖が独特。
・真実・事実が書いてある本。ハードボイルド。主観を排除している。伏線もあり、戯曲的な場面もあり、面白い。
・この世界で見たくないものばかりだった。登場人物の心情がわからなかったが、これはまさに日常生活と一緒だと思った。
・金持ちと貧乏人、双子はどちらも経験している。
・残酷な大人の童話。この2人の存在は何なのか。不思議。善悪と判断しない双子にはどう映ったのだろう。
・ユダヤ人に対する姿勢が印象的。ラストの父殺しは儀式。「ぼくら」でいることに限界を感じていたのでは。
・浦沢直樹の「MONSTER」を連想させる世界観。
・陰鬱だけでなく、はつらつとした印象もある。
・ユダヤ人の項目はフランクルの「夜と霧」を連想させる。日記の体裁だけど行間も感じられる話。
・悲壮感がない。悲惨さを感じさせないところが他の小説にはないところ。主人公のしたたかさも面白い。
・直接書かれていないが悲しみと愛があった。祖母も分っていたのでは。生きるところのたくましさを感じる。
・双子の行いは倫理的か?人間的か?彼らの行動原理は徹底しているが、そもそもそれが異常。1つのルールを徹底していることは日常ではない。戦争の帰還兵を想起させる。
・極限状態で生ぬるいことを言っていられない状況。双子は感情を自分で麻痺させていた。母の死でもそれは解凍されなかった。しかしその一方で弱者に対する憐れみの心がある。
・ラストの双子の分離。なんで別々になったのか。どちらが本当の自分だったのか。本当は広い世界へ行きたかった?
・双子以外の人の感情がむき出し。戦時下だったからこうなったのか?普段の日常で生活していたらどうなっていたのだろう。
ほかには
・本を読むと「映像・声が出てくる」派?それとも「文字から想起する」派?
・体験と経験の違い
・タイトル「悪童日記」の由来
・(ネタバレしない程度の)続編の内容について
など、普段の読み方からさらに一歩踏みこんだ内容についても参加者それぞれの意見が飛び交い、充実した時間となりました。皆さんの意見を聞いて続編を読みたくなったと話す方も何人かいらっしゃいました。3部作全てを読んだあとに再読しても楽しめそうです。
参加者の皆さん、ありがとうございました!
次回は2023年8月20日(日曜日)9:30~
課題本はフィツジェラルドの「グレート・ギャツビー」
フィツジェラルドはヘミングウェイも著書に取り上げるくらい一目置いていた作家!
皆さんの参加をお待ちしています。
案内はこちら