第33回読書会blue開催レポート
令和4年10月23日(日曜日)9:30~ 高志の国文学館研修室103にて[読書会blue]第33回「金閣寺」開催しました。
課題本は三島由紀夫の代表作「金閣寺」
三島由紀夫を読書会blueで取り上げるのは2回目(過去に「潮騒」を取り上げています)。
読書会blueでは感想を話し合う前に主催者から課題本に関する小話を紹介しています。
今回は
・金閣寺放火事件
・金閣寺と三島由紀夫
について紹介しました。
Wikipediaでも金閣寺放火事件や三島由紀夫の概要は紹介されていますが、私からはさらにつっこんだ三島自身のエピソードや事件当時の新聞記事などを紹介しました。
金閣寺は多方面から見ることのできる課題本です。
今回は主人公を取り巻く人間模様を中心としながらも、仏教や三島が終生拘った「美」についてなど多くの意見や感想が聞かれました。
参加者からの感想を紹介します。(ネタバレ多数/一部抜粋しています)
・禅宗でも臨済宗と曹洞宗は過酷な差がある。老師に言われた言葉がショックで溝口は生きる目的を失った。金閣寺を燃やすことですべてをなくしたかったのではないか。
・話が進む過程で溝口がどんどん欲にまみれていく、欲に溺れている。これが人間としての弱さである。
・人間関係に着目して読んだ。気が滅入る本。鶴川と柏木は対照的。鶴川は溝口と打ち解ける魅力的な人物。哲学的な部分がある。
・いろいろな読み方のある1冊。特に主人公にコミットした。学生時代喋るのが苦手だったので主人公の気持ちはよくわかる。身にせまるものがある。
・印象的なシーンが多く、事件が独特。容疑者の記述を読んでよく三島が書いたと思う。個人的には創作寄りではないと感じる。
・事件の事実に三島独特の感情を入れている。美への憧れが感じられる。三島の生きている時代にこの事件があったことに運命的なものを感じた。
・主人公は父に「(金閣寺は)美しい」と聞いていたけど実際にみたら美しくなかった。外と中の追求、不一致。美しい心の鶴川とニヒリズムの柏木。いろいろな人物を登場させて変わっている。
・現代でもいろいろな事件が起こるように人は悩みながら生きている。いろんな人間の心理がみえる。ラストの「生きようと思った」のはなぜか。
・かなり読みやすい印象。金閣寺は良いものと聞いていた(理想)と現実に乖離がある。三島は金閣寺の一般で入れたところのみ取材している。
・金閣寺は観光のイメージが強い。主人公はルートに乗せられているし、本当は仏道を求めていないのでは。肉体に対してのこだわりは三島自身のこだわりであり、それに金閣の美しさをプラスしている。美しさ、金閣と勝ちたかったのか。
・主人公の思いとしては老師はいつか死ぬけど金閣は続くから破壊せねばならぬと感じたのではないか。孤独の描写は秋葉原の事件を想起させる。
・表現が緻密。目の前に人や風景が見える文章。ラストの言葉は三島の言いたいことではないか。金閣を焼くことで自分を表現かつ自分を変えたかった。生きることは泥臭い。
・描写に圧倒され一気読みできなかった。老師・柏木・母との関係がつらく苦しい印象。金閣をなんで燃やしたのか考えながら書いている。主人公は生きにくさを抱えており、自死をなんとも思っていない。ずっと死にたいかった主人公がラストに生きたくなった箇所が心震えた。
・柏木は素直な人。話を動かしている人物。人を思うように扱っている。人生攻略している。
・主人公にとっての美とはなにか→主人公はエスカレーター式で仏門に入っている。物質的な美もあるけどあり方の美、律する美もある。
・途中悩みながらも(金閣寺を)なぜ焼いたのか→主人公にとっての世界は仏門のみ。周囲への環境のプレッシャーを感じていた。燃やすことで圧力が解き放たれ、息をつけた。
・主人公は自分の理論で世界を見ており、客観的な世界を見ていないのではないか。女性には拒まれていないが、受入れられない、認識できていない。
・美しいものへのコンプレックスがあり、圧倒的な美に対して自分は醜いと思っている。自分で金閣を夢想している主人公は考えが独特。少年時代から金閣が美の象徴。戦争によって醜い自分と美しい金閣が一緒になった。
・実際に金閣を見たときのこき下ろしが辛辣。それだけ美意識が高い。
・老師は何も言わなかったが、もし言っていたら主人公は変わったのでは。柏木が出てきたことで主人公に別の道が見えたと思う。
・鶴川は明るい人だが、本当はそうでもなかった。柏木はずる賢く、欲望に忠実。尺八のシーンは主人公と柏木の美に対する考え方の違いを感じる。
・醜い犬は老師の比喩表現?金閣の闇が美しさに変わる。燃やすときの表現が美しい。
ほかには
・カバラの生命の樹
(参加者の感想がすべて生命の樹の要素に入っている)
・三島由紀夫自身について(比喩表現の緻密さなど)
・美について(肉体的な美から内面の美など)
など、時間の限り語り合いました。
参加者の皆さん、ありがとうございました!!
そして主催者の日付間違いメール紛らわしくてすみませんでした…!
次回は2022年12月18日(日曜日)9:30~
課題本はサン=テグジュペリの名作「星の王子さま」
これまでいろいろな西洋作家を取り上げてきましたが星の王子さまは初!!
関連本も多数出版されていますし、過去に読了したことがある方も多いのではないでしょうか。
皆さんの参加をお待ちしています。(受付は終了しています)