第32回読書会blue開催レポート

令和4年8月14日(日曜日)9:30~
高志の国文学館研修室103にて[読書会blue]第32回「あの子は貴族」開催しました。

今回は特別企画 ~富山ゆかりの文学を読む~ と題して、朝活読書愛好家:

上牧文佳さんをファシリテーターに迎えての読書会です。

課題本は山内マリコさんの「あのこは貴族」

著者である山内マリコさんファンの方、Twitter経由で知ったという方も何人かいらっしゃいました。

 

自己紹介のあと、上牧さんより

・著者:山内マリコさんについて

の小話を経て読書会が始まりました。

当日プロジェクターの不調で映すことができなかった資料も掲載します。
 
 
参加者からの感想を紹介します。(一部抜粋しています)

2021年に富山県内ロケで映画化されていることから、映画の感想も取り混ぜながらの感想も多く聞かれました。

 

・華子さんは結婚のためにお見合いをする。打算的。結婚だけがすべてではない。

 

・本を何度か読み直し、映画も見たが毎回発見がある。女性同士の友情、地方の問題が見える。彼女の散りばめられた要素が入っている。

 

・裕福な環境かつ狭い世界で生きてきた華子が謝ることで変化があった。人は変われると感じた。

 

・東京の描写の景観から東京に対するこだわりを感じられる。

・冒頭の華子の描写からラグジュアリー階層が想像しやすい。美紀の章は富山をイメージしやすい描写だった。小説の舞台は氷見を思い起こさせた。

・美紀と同様の体験をしたことがある。当事者だから言いたいこともあるのでは。

 

・美紀の心理描写が濃い。地方出身者だからこそ東京のキラキラ感を感じている。2人の関係は影響関係?対等ではなくどちらかが教えてあげる関係。今ならではの女性の葛藤も知りたかった。

 

・いろんな人がいていろんな人生がある。閉ざされたコミュニティの人を尊重したほうが良い。

 

・映画からは華子のほうが昔っぽい印象。美紀は現代っぽい印象。

 

・東京には見えない階層があってどうやって生きていくかが問われる。環境が人を作っている。

・タクシーで始まり、タクシーで終わる。乗り物の違いは心理状況の変化を表わしている。女は仲良くできないようにできている。

 

・何度か読み返し映画も視聴した。柔らかい印象を持った。華子と幸一郎の回想からは多様性を感じられる。

 

・1~2章は上滑りの印象があるが、3章以降は圧巻の描写。出版当時の映画では時代が変わっているぶんアップデートされている。

 

・人のつながりが緩い。出会いが希薄。他作品にも幸一郎と類似した人物が出てくる。変わらないパーソナリティがある。他人の本音はわからない。

 

・読みやすい描写。どちらの心情、生活描写も分りやすい。田舎→東京へ上京することで自由な精神性を持っている。その一方、東京うまれ東京育ちの閉鎖性(クローズドサークル)も感じた。田舎でも東京でも変わらない。

・ユニーク。ファンタジーなのかリアルなのか。こんなことはありえるのだろうか。誰目線のタイトルなのか?ファンタジーな要素が要所、要所にある。

 

・華子から見た幸一郎は貴族。リアルさはないが、どこかにあってほしい。それでこそ小説。

 

・幸一郎は爬虫類のような人。一緒にいると温かいが、ずっと居ると冷える。心をうち解けることがない。心から相手を理解していない。親の歴史を押し付けられ、他人の関心が少ない。

・中学受験した経験からリアルさを感じた。金持ちの描写は生々しいと感じた。東京女子婚活あるあるではないか。

 

・幸一郎がこれだけひどくないと小説にならない。自身の知っている内部生はいいやつ、誰とでも仲良くできる。地頭で良い大学に行くなどコンプレックス・欠点がない。人間的に面白くないため幸一郎の欠点は山内さんが人工的に入れたものではないか。

 

・内部生は何の苦労もしていないことをコンプレックスに感じている。自分にないコンプレックスの裏返し。自分のコンプレックスを指摘してくれる人はそういない。外部生に対するコンプレックスを内部生も持っている。

ほかには

シーン別に映画と原作の比較

ジェンダー問題

登場人物から見えてくる生き方・生きづらさ

など、課題本に関する話題が多く語られました。

参加者の皆さん、ありがとうございました!

 

次回は2022年10月23日(日曜日)9:30~

課題本は三島由紀夫の「金閣寺」

三島由紀夫を取り上げるのは「潮騒」以来2回目。実際に起きた金閣寺放火事件を素材に創作された三島由紀夫の代表作です。

皆さんの参加をお待ちしています。

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