第30回読書会blue開催レポート
令和4年4月17日(日曜日)9:30~ 高志の国文学館研修室103にて[読書会blue]第30回「駅前旅館」開催しました。

課題本は井伏鱒二の「駅前旅館」。
まるで漫談のような口調で語られるのは宿屋稼業の舞台裏。以前課題本として取り上げた山本周五郎の「青べか物語」と年代が近く、読みながら昭和30年代の情景を感じられます。
今回は井伏鱒二の作品から当時の番頭に仕事振りを通して庶民の生活や息遣いの感じられる1冊を選びました。
以前富山駅前に存在した駅前旅館の話も登場しましたよ。
参加者からの感想をいくつか紹介します。
当時の風俗描写の緻密さや人間観察の描写、テンポの良さは多くの方が挙げていました。
・良いところを集めて1冊にした印象。当時の風俗描写があり、映像が浮かんでくる。
・人間観察の描写、当時は人を観察してレベルを上げていたのではないか。
・時代と内容が渋い。世俗がありありとわかる。小説というよりかは歴史書を読んでいる印象。
・情緒ある話。観察眼を生かしたエピソードも多く、奥ゆかしい。
・主人公の不器用さに共感。
・人間観察が面白い。人間観察の宝庫。地域性についても面白い。
・喜劇というよりかは悲喜劇。主人公は冷静・洞察力がある。
・女性観に関しては女の嫌な面を見て育った環境もあるのかもしれない。
・こっけいな表現が多い。自分のことを卑下している場面が多く、自身のことを雑な人間と言っていることからも主人公の不器用さを感じる。
・見たことがないのにありありと感じられる描写。出版当時懐かしさを感じた人も多いのでは。
・テンポよく落語のような印象。異次元のことをさらっと織り込むなど歴史的なものとしても見れると思う。
・当時の義理・人情が垣間見える。
ほかには、
・主人公と登場した女性との関係について(女性のことをよく知っているからこそ突き通せないのではないか)
・ドジョウの民間療法について(後日こちらでも調べたところ民間療法であるようですね。ドジョウは熱や毒素を吸い取るとのこと)
・柊元旅館は現在のゲストハウスみたいな雰囲気だったではないか
など課題本の感想からさらに1歩踏み込んだ語り合いとなりました。
小話は
・駅前旅館について(江戸時代~昭和の変遷)
・井伏鱒二と旅
を紹介しました。
現在の旅館の形になったのは実は明治に入ってから。戦後、団体旅行(慰安旅行・就学旅行)が流行したことから旅館は大きな変革を求められました。旅館の女将さんというポジションは実は戦後から登場したのですよ。
参加者の皆さん、ありがとうございました!
次回は2022年6月19日(日曜日)9:30~
課題本は太宰治の「斜陽」
戦後の没落貴族である主人公の叶わぬ恋。家族の死を経て手にしたのは希望だったのか、それとも…。青空文庫でも読むことのできる1冊です。
皆さんの参加をお待ちしています。