読書会blue第9回開催レポート

平成30年2月25日(日曜日)9:30〜
高志の国文学館にて
読書会blue第9回「君たちはどう生きるか」
開催しました。

 

こちらは昨年漫画化されたこともあり
話題になっていましたね

 

小話の際には参加者全員がメモを取っておられ、意欲の高さと小話が定着してきてきたのを感じています

 

今回の課題本は、まさに

「語り合うとまた読み返したくなる1冊」

 

昔の本ならではのとっつきにくさは全くなし!
さらっと読めた方が多かったと思います
今回は印象的なエピソードをピックアップして語り合いました。

読書会blueでは感想を語り合う前に主催者から課題本に関する小話をしています

今回は

・著者である吉野源三郎について
・最初に出版された昭和12年(1937年)はどんな時代だったのか

を当時の新聞も交えて紹介させていただきました。

 

・著者である吉野源三郎について

吉野源三朗はジャーナリスト・編集者・児童文学者とさまざまな顔をもつ人物でした。
戦後は雑誌「世界」の初代編集長として講和問題、憲法問題など世論形成に大きな役割を果たし、平和運動に尽力しています。

 

1931年に治安維持法違反で逮捕されており、このとき抱いた軍国主義への不信感が後年の反戦活動、理想主義的な思想体系につながったようです

 

課題本でもある「君たちはどう生きるか」はもともと倫理についての本として書かれ、児童文学の形をとった教養教育の古典としても知られています。

他出版社に掲載された著者のあとがきからは様々な角度から物事を見る能力、自主的・総合的に思考し、的確に判断する能力を意識したことが感じられます。

 

・最初に出版された昭和12年(1937年)はどんな時代だったのか

あとがきには当時の様子として軍国主義や盧溝橋事件が挙げられていますが、正直どのような事件か知らない方も多いと思います。

ここでは本が出版された1937年(昭和12年)の大きな事件としてゲルニカ爆撃盧溝橋事件を紹介させていただきました

 

・ゲルニカ爆撃

スペイン・バスク地方の古都ゲルニカが午後4時半から数時間にわたってナチス・ドイツ空軍、イタリア機などに爆撃を受けた。街の大半は破壊され、多数の市民が死傷。

焼夷弾が本格的に使用された世界初の空襲でもあります。

この事件を受けてスペイン出身の芸術家:ピカソが絵画および壁画「ゲルニカ」を残しています。

 

・盧溝橋事件

7月7日北京郊外盧溝橋付近で夜中から早朝にかけて夜間演習中の日本軍に対して何者かが発砲する事件が発生。

これを受けて当時の近衛内閣が日本軍を華北に派遣することを発表。華北での軍事行動が拡大します。

(当初は不拡大方針を取っていたが陸軍や政府内の強硬派の意見に押されて強硬方針を打ち出した、という実情があります)

その後8月に上海で大山海軍大尉殺害事件を受け海軍も首都:南京を爆撃。こうして日本と中国は以後8年に及ぶ日中戦争へと突入しました。

 

写真は盧溝橋事件を伝えた当時の新聞です。

(北陸日日新聞、富山日報ともに1937年7月8日夕刊)

こちらの富山日報、北陸日日新聞は北日本新聞の前身の新聞の一つになります。昔の新聞ならではの文字の読みにくさはありますが、よく見ると日付が上部分と右側で違っていたり、広告から当時の様子が読み取れます

 

他に当時の大きな出来事としてはヘレン・ケラー来日、神風号が立川~ロンドン間を51時間19分23秒で飛行し、日本最初の国際記録を樹立、などがあります

なお1938年(昭和13年)から国家総動員法が成立し、一段と戦争の色が濃くなっていきます

 

ここまで課題本への知識が深まったところで読書会のメインである語り合いに入ります。前置きが長いとかつっこまないで(泣)

今回の課題本で際立つのがコペルくんとおじさんの関係性が良さです

おじさんは知識をひけらかすわけではなく

「コペルくんの良いところは褒め、締めるところは締める」

さじ加減が上手ですよね

 

各章のエピソードに関連するコペルくんとおじさんのやりとりも私たちが誰かにアドバイスする際にどうしたら良いかを指南し、気づかせてくれます

途中あえてコペルくんに問いを残すエピソードもおじさんらしいと演出ですよね

2章「貧しき友」では浦川くんが家が貧しいということでクラスメートから批判の的にされてしまいます。

おじさんのノートには自分たちと違うところを許すことの大切さを説いています

私たちは誰しもが多少なりこだわりを持っています

そのなかで他人の違うところを許すことができず結果、批判してしまう

あくまでコペルくんの話として取り上げられていますが、大人の世界でもそういうことはありますよね

感じたことを語り合うなかで、コペルくんの体験から自分自身の体験を重ねた方もいらっしゃいました。

本を読む、という行為はインプットですが、本の感想を言葉にして、みんなで語り合う、アウトプットすることで更に本の内容が深まりますよね

今回は他にも印象的なエピソードをピックアップして語り合いましたが1章、1章のエピソードで区切って語り合っても楽しめると思います。

 

今回の課題本は全員一致で「語り合うとまた読み返したくなる1冊」でした!!

参加者の皆さん、ありがとうございました!

 

次回は4月22日(日曜日)9:30〜
課題本は志賀直哉の「和解」
父親と息子の和解をテーマにした1冊です

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皆さまの参加をお待ちしています

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