第8回読書会blue開催レポート

平成29年度12月9日(土曜日)9:30~
高志の国文学館にて第8回読書会blue「車輪の下」開催しました。
ヘルマン・ヘッセの自伝的小説です。
タイトルでもある「車輪の下」は
ドイツ語で落ちこぼれという意味を含んでいます
途中主人公のハンスに校長が意味深に
語りかけてますね
読書会blueでは話し合いに入る前に
毎回課題本に関する小話をしています。
今回は
・舞台となったマウルブロン修道院
・ヘッセの読書術
を紹介させていただきました
・舞台となったマウルブロン修道院
マウルブロン修道院は南ドイツのバーデン・ヴュルテンベルク州にあり、1993年に世界文化遺産に登録されています
(https://worldheritagesite.xyz/maulbronn/からお借りしました)
修道院群は1147年に建設が始まったシトー会修道院で、町はずれに立地し壁で囲まれている。付属する建造物群など全体の保存状態がよく、ロマネスク様式からゴシック様式に移行する建築様式の変遷が見られることに特徴がある。礼拝堂、ホール、診療所、宿泊所、食堂、貯蔵庫、工場、製粉所など時代とともに施設が増やされ、周壁も建造された。16世紀にはプロテスタントの神学校となった。建築様式の変遷が明確であり、上下水道設備が高い水準を持つことなどが評価され世界遺産に登録された(引用:世界遺産詳解)
ざっくり言うと
修道院を中心に小さな町が形成されていて
非常に歴史ある建物だということです。
加えて、改装の際に当時の流行りが取り入れられたため建物にいろんな様式が使われているのも面白いですよね
ちなみに修道院の建物の中には
今も福音派の全寮制学校が入っています
こちらではヘルマン・ヘッセのほか天文学者のケプラーやロマン派詩人・思想家のヘルダー・リンが学んでいます。
・ヘッセの読書術
ノーベル文学賞を受賞しているヘッセですが実は大の読書家だったのはご存知でしょうか。
神学校を脱走後も職を転々としていたヘッセは知識・教養の多くを読書から得ています。
約30年間で新聞、雑誌に掲載された書評や読書体験を基にした著述は3000点以上!
ヘッセの並々ならぬ読書愛を感じますね
そんなヘッセの読書に関する著述を翻訳した「ヘッセの読書術」(草思社)に掲載されていたものからヘッセの読書術をピックアップして紹介
・“万人に共通の必読図書”などありはしない
→私たちが必ず読んでおかねばならないというような本のリストなどは存在しないのである!(「書物とのつきあい」11p)
・好きな本は好きな風に読めば良い(いろいろな視点で本を読む)
→実際にヘッセは読書の方法として
①:作者が書いた文章をそのまま素直に受け取る
②:作者とは別の視点で読む。対話しながら読む。
③:②の読み方をさらに発展させ、完全に読者の視点のみに従って読み進めていく方法。
を紹介しています。
その本に何が書かれているかなど関係なく、読者は想像力を膨らませ、考えを進めていく。この3つの読み方を自由自在に移動できるようになった時、それは“理想の読者”になれる(「読書について」)と語っています。(個人の方のサイトも参考にさせていただきました)
・本にはそれぞれに最適な“形”がある
→自分の心地よい形にアレンジする。自身の蔵書を大切にする。(製本し直す、清潔さを保つ、自分の蔵書を秩序正しく整理する)
こちらは書店員、出版社等本に関わる仕事をしていたヘッセならではの視点だと思います
多くの本を読んできた著者の本の楽しみ方は全員が納得!
特に読書愛を感じることばがこちら
美しい絨毯が床を、高価な壁掛けと絵が飾っていようとも、本のない家は貧しい。
(「書物とのつきあい」37p)
ここまで言い切れるヘッセの読書愛に感服です
車輪の下がちょっぴり深まったところから読書会に入ります。
一人ひとりの発言を聞きつつ
終始和やかな雰囲気で話は進みました
・幼少期から周囲の期待を背負い勉強ばかりしていたハンスは、いつかこのような破たんを迎えていたのではないか
周囲の助けがもっとあればハンスはここまで追いつめられることはなかったのかもしれません
(話し合いでも周囲の助けがあれば・・・という感想が多く聞かれました)
・勉強したら褒めてもらえる、認めてもらえる、まさに条件づけの愛情しか知らなかったハンスに無条件の愛をくれたのがハイルナーである
ハイルナーに会えなかったらハンスは生き方に疑問を持たなかったかもしれないですね
後半で機械工として働きはじめたハンスが亡くなるまでに働く喜び・生きる喜びを知ることができたのは救いなのではないでしょうか
エンマという誘惑女子の話もちらっと出ました(相当なやり手という話が大半)
純朴な少年ですからしゃーない。笑
そんななか、時折出てくる故郷の自然の描写が重たい内容を美しく打ち消しています
実際に「車輪の下」は
ヘッセの故郷カルプで執筆されたそうです
そう思うとハンスが見た景色は
まさにヘッセの故郷の景色と言って
良いのかもしれません
自分を形成するためには勉強だけでなく
「生きた時間」に関わることが大切、ですね
(参加者さんの言葉をお借りしました)
参加者の皆さん、ありがとうございました!
次回は2018年2月25日(日曜日)9:30~
課題本は吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」です。 案内はこちら
皆さまの参加をお待ちしています。