第46回読書会blue開催レポート


令和7年2月24日(日曜日)9:30~ 高志の国文学館 研修室103にて[読書会blue]第46回「青い壺」開催しました。

 

課題本は有吉佐和子の「青い壺」(1976年)

2011年に復刊されるとじわじわと売上を伸ばし、この1年で10万部以上発行されるなど今注目されている1冊です。
2024年12月にはNHK「100分de名著」にも紹介されました。

 

読書会blueでは毎回課題本に関する小話を紹介しています。

今回は

・有吉佐和子について

・1976年の女性たち(当時の時代背景など)

を紹介しました。

有吉佐和子は和歌山県出身。父の仕事の都合により6才でインドネシア:ジャワ島へ移住。現地の日本人学校にて少女時代を過ごしました。太平洋戦争のため1941年帰国しています。
大学在学中から古典芸能に興味があり、演劇評論を志していたことから卒業後は一時期舞踊家:吾妻徳穂の秘書を務めていました。

1954年同人誌「白痴群」より「落陽の賦」を発表。1956年「地唄」が新人賞候補、次いで芥川賞候補となり文壇デビューを果たします。その後は自らの家系をモデルとした「紀の川」、「華岡青洲の妻」などで文壇的地位を確立。執筆の傍ら海外留学や国内外の取材旅行なども果たしています。1970年代以降は「恍惚の人」や「複合汚染」など社会問題に目を向けた作品なども執筆。「恍惚の人」「複合汚染」はともに反響が大きく、当時の流行語に選ばれるほどでした。2022年6月には和歌山市立有吉佐和子記念館が開館し、実際に利用された資料や原稿を直接見ることができる資料館として多くの人々に親しまれています。

タイトル「青い壺」のモデルとなった壺は「青磁筒花生 銘 大内筒」(東京:根津美術館蔵)。執筆するにあたっては丹念に調べ、専門家の助言を貰っています。実際の青い壺の写真は文化財オンラインのHPからも閲覧可能です。

 

今回の課題本は年代問わず女性が取り上げられていること、著者が女性であったことから出版された1976年当時の女性たちについて時代背景なども取り上げました。戦後生まれが人口の半数を超えたことや高齢化、節約を美とする消費型生活への変貌、職場をはじめとする様々な分野で男女平等を求める動きが活発化したことなどを紹介しました。

参加者からの感想を紹介します。(ネタバレ多数/一部抜粋しています)
1話~13話までのオムニバス形式の小説でしたが、登場人物に繋がりが見えたり、最後には思わぬ形で戻ってきたりと青い壺を通しての登場人物の気持ちや行動など話題が出てこなかった話がなかったのではないかと思うくらい話題が豊富に飛び出しました。

 

・昭和のホームドラマの中でもほんわかあたたかい部類

 

・白菜、ポリバケツなど言葉の使い方が庶民的

 

・青い壺を軸に話が展開するのが面白い

 

・青磁は茶会の文化が日本で普及した当時の壺

 

・7~9話が面白い、共感できる

・お金に絡む話があるけどドロドロ・いやらしさがない。さわやかな印象

 

・(13話より)昔から贋作は存在している。自身の作品を(ニセモノと)認めたくない気持ちもあるのでは

 

・連作短編内に繋がっている人物が多いので読みやすい

 

・(12話)シメさんはあまり話さないけど真面目。安子との違いを感じる

 

・人物の肉付けがしっかりしている

 

・文化的なものが入っていて庶民的。品がある

 

・(2話)あえて誰も言わないところが世知辛くない

 

・(13話)ラストの刻印しないことにした省三に謙虚さを感じる。焼き物は自分1人の気持ちだけで最高傑作にならない

 

・戦前は結婚するにしてもパートナーが決まっている人が多かった。パートナーの仲を深める過程が壺が焼きあがる過程と似ている

・自由は当時のステータス。自由な代わりに代償もある

 

・1話と13話を比較すると最初の価値観と変わっている

 

・扱う人でものは良くも悪くもなる。生き方にもつながるのでは

 

・当時の社会の価値観は今と変わらない

 

・1話1話がとても良く、ラストも絶妙。さまざまな世界の人間群像が描かれており、共感できるものがあるから流行るのでは

 

・(13話)自分が省三の立場なら黙ってみていたかも

 

・青い壺は俯瞰的。積極的に何かするわけではないが、意思を持ってるみたい

 

・(13話)ラストの刻印なし→省三がもはや自分のものではないと感じたからでは

 

・全体を通してみるいろいろなテーマは今でも新しい。古く感じない

 

・共感できるからこそ読み継がれている

 

・(1話)晴子はなぜ青い壺を売ったのか→すごく良い出来で古色をつけたくなかったから

 

・(13話)順番に伏線が回収されている。こうなるからこそ読み返したくなる

 

・なぜ青い壺は残ったのか、残る意味には人の気持ちもあるのでは

 

・省三が所有しなくてもよい、青い壺の存在が残ることに意味がある

ほかには

 

・13話ラストの解釈あれこれ(感想を聞いたうえでの考察から美術品の価値についてなど)

 

・各自気になった話についての考察(1~13話ほぼすべての話について感じたことや考察)

 

など、参加者全員が異なる視点の感想を聞いたうえで、さらにもう一歩踏み込んだ語り合いを行う時間となりました。全13話のほぼすべての話が話題に上り、1人読みでは分からなかったり、疑問に感じた箇所に関しても様々な視点の意見が飛び出しました。

 

読書会も終始和やかな雰囲気で、参加者全員が感じたことを言葉にしていたと感じます。

参加者の皆さん、ありがとうございました!!

次回は2025年4月20日(日)9:30~

課題本はモンゴメリの「赤毛のアン」

読みながらカナダ:プリンス・エドワード島を空想した方も多いはず!

皆さんの参加をお待ちしています。

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