第31回読書会blue開催レポート

令和4年6月19日(日曜日)9:30~ 高志の国文学館研修室103にて[読書会blue]第31回「斜陽」開催しました。

課題本は太宰治の「斜陽」。

出版当時は「斜陽族」という言葉まで生むほど社会に影響を与えた1冊です。

前回取り上げた井伏鱒二の弟子、ということも今回選んだ理由の1つですが、桜桃忌が近いこと、太宰治の誕生日と読書会の開催日が重なったことも非常に縁を感じました。太宰治は「津軽」以来2回目の課題本です。

冒頭、斜陽の執筆された安田屋旅館の写真も紹介しました。
(以下写真。後に来た方には紹介できなかったのでよかったらこのページでご覧ください)

参加者からの感想を紹介します。

 

・お母さまの亡くなるときの捉え方が娘と息子で違う。

・(上原から)返事がないのに諦めないのがすごい。本当にかず子は上原のことが好きだったのか。

・太宰治の結末を知っているから直治(若い頃の太宰)と上原(晩年の太宰)が重なる。

・かず子は華族が没落し、自身がどう生きるか考えている。しかし、上原や直治は前のままな印象。

・登場人物全員が弱い人だと思った。強い人なら縁談決めたのでは。

・言葉のセンスが良い。(例:札付きの不良など)

 

・かず子は情熱的な人。自身の状況を打破したい。当時はお見合い結婚が主流で恋愛したことがなかった。

・「人間は恋と革命~」は破壊思想とリンクしているのでは。

・かず子の考え方には共感できないが、直治の考えには共感できる。直治は繊細な人。

・8章の手紙には太宰の希望が入っていたのでは。

・情景がきれい。心理描写が美しい。今は失ってしまったものが残っており、著者の才能を感じる。

・かず子の気持ちがわかる。すがるものがなく、憤っていた。

・直治の遺書に出てきた洋画家の奥さんがあえて上原の妻だということをぼやかしている。人をステータスで好きになることもあるかもしれないけど、直治は純粋に好きになった。
 

・大人がいないという描写。革命家としてかず子は行動を起こし、将来どうなるのかがおもしろい。

・YouTubeで太宰治の映像を見つつ読了。ヘビの描写など著者のなかにキリスト教が入っている。
(ヘビは聖書のなかではちゃっかり、抜け目のない存在。変化のときに出てくるそうです)

・物語序盤に白、死の描写がある。

・面白くて2回ほど感極まるときがあった。無償の愛。お母さまは懸命な人。

・太宰は女性を書くのが上手。かず子の無邪気さの中に強さを感じる。

・「人間は恋と革命~」はかず子自身の問題。どういうものかわからず革命に恋していた。

・8章序盤の「ゆめ」は夢から目が覚めたということ。
(チャイルド→夢の中、コメディアン→夢から覚めた)

・人間性を行き来し、自分の人生観を根本から変える本。読み手の好き嫌いはあるかもしれない。

・女性の心理描写のセンスが良い。かず子は恋にすがらないと生きていけない。

上原が理想と離れていても、それでも上原にすがる。
 

・犠牲者→キリスト?

・生きて生まれた文学。上原・直治・かず子は「生きベタさん」(生きるのが下手な人)
一般の生活とギャップが埋められない。
太宰の作品にお金の単位は出てこないのは著者が見ていないからでは?

・母親像の理想が高い。生まれながら比べられた環境にいたために太宰は早く死に憧れた。文章はキレイだけど欲深い印象。

・ちいさい人→私生児と母。ラストには上原への仕返し、直治がいたこと、かず子の子、すべてが詰まっている。

・日本人は英雄・勇者が好き。しかしながら、社会の狭間で犠牲になっている人もいる。もがき苦しんでいる人を忘れてはいけない。

・作中にある「人間は、みな、同じものだ」という言葉が心に残った。

ほかには

・「人間は恋と革命のために生まれてきたのだ」が斜陽のテーマとなっている。

・出版当時、世の中の状況が変わっていくなかでの憤りを感じる

・太宰本人の気持ちが反映されている

・革命とは常識を打破して新しい生きる道を切り開いていくこと

・現在も斜陽の出版当時と同じような状況になっているのでは

・太宰自身の人柄について

など、実際に太宰治がいたらぜひ聞いてほしい語り合いとなりました。斜陽は登場人物の視点を変えるとぐっと見方が変わりますし、キリスト教やチェーホフなど話題が多岐にわたる1冊です。またの機会にぜひ取り上げたい…!!

 

小話は

・櫻の園と斜陽日記

・華族制度

を紹介しました。

 

太宰治が生家の没落を目の当たりにした際に思い出されたのがチェーホフの「櫻の園」、そして斜陽を執筆するうえで参考としたのが愛人:太田静子の「斜陽日記」でした。華族制度については制度の概要と作中で取り上げられている身分についてや戦後の財産税課税によって多くの貴族たちが困窮していた当時の様子について触れています。

 

チェーホフの「櫻の園」は青空文庫でも閲覧できますので、よろしければそちらもどうぞ。

参加者の皆さん、ありがとうございました!

 

次回は2022年8月14日(日曜日)9:30~

課題本は山内マリコの「あのこは貴族」

特別企画 ~富山ゆかりの文学を読む~ と題して、朝活読書愛好家:上牧文佳さんをファシリテーターに迎えての読書会です。

皆さんの参加をお待ちしています。

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