小話:悲しみよこんにちはに隠された時代背景

今回は課題本「悲しみよこんにちは」より
・著者:フランソワーズ・サガンについて
・「悲しみよ こんにちは」出版当時の反響について
読書会でお話した内容をご紹介します。
「悲しみよ こんにちは」を読んだ際やこれから読む方の参考になりましたら幸いです。
当日の様子や話し合った内容についてはこちら
目次
・著者:フランソワーズ・サガンについて
サガンはフランスの中流階級(ブルジョワ)の出身。幼いころは内気で本が好きな少女でした。
14歳から本格的に文学を学び始め、18歳で処女作「悲しみよこんにちは」を出版し世界中で大ヒット!
無名の作家:サガンはあっという間に世界のベストセラー作家となりました。

莫大な資金を手に入れたサガンですが、その後の人生は交通事故、薬物依存症、結婚、離婚などなど波乱万丈の人生を送っています。
タイトル「悲しみよこんにちは」は同じくフランスの詩人:ポール・エリュアールの詩「直接の生命(生)」をの一節から引用しています。
読書会では詩の内容と本のストーリーを照らし合わせて話し合う時間もありました。
ポール・エリュアールはダダイズムやシュールレアリズム運動の中心に立ち、それまでの伝統的な型を破る斬新な詩を書いた人物です。
伝統的な型にとらわれず、新しいものを生み出す人物というのが、サガンと共通するところかと思います。
…というのも「悲しみよこんにちは」は出版当時とある方には非常にうけなかったからなのです。

・「悲しみよこんにちは」出版当時の反響について
出版するやいなやあっと言う間に世界的ベストセラーとなった「悲しみよこんにちは」
中年の女性、特に母親世代には非常にウケませんでした。
今以上にキリスト教が色濃く、カトリックの聖家族が良いとされていた時代です。
「若い女の子が○○○をする」「実際に行為を行う」という表現はもちろんNG。
これには当時堕胎できなかったため、望まぬ妊娠が悲劇となっていたことも背景にはあります。
少しでもずれたことをすると非道徳的と非難される風潮も相まってセシルやレイモンの奔放な行動は母親世代にウケなかった要因でもあるでしょう。
フランス、というとなんとなく恋愛や性に奔放なイメージがあるため、ここは意外ですよね。
サガンは当時の反響について
「(堕胎できなかったため、望まぬ妊娠が悲劇となっていたのに)奔放に行為をする。しかも妊娠しなかったことが気に障ったのでは」と振り返っています。
そんな「悲しみよ こんにちは」は中年女性からは非難の声があった反面、同階級の若い世代、特に女性には支持されました。
日本でも学生運動を主導していた若者がこっそり読んでいたようですよ。
戦争が終わり、時代の過渡期だったからこそ生まれ、受け入れられた1冊なのでしょうね。
最後に、サガンはインタビューで「まったく知らないことを創作することはできない」と語っています。
冒頭でサガンは内気な性格であったとご紹介しました。
裏付けは取れなかったので想像ですが…もしかしたらサガン自身の経験を参考に「悲しみよ こんにちは」は作られたのかもしれません。
あなたはどう思いますか?
ちなみに出版と同時期に制作された映画「悲しみよこんにちは」もおすすめです。
原作に沿った展開となっており、間奏の唄が非常に印象的な映画です。
当時流行したセシルカットやファッションも見どころです。
こちらも併せてご覧ください。

西洋文学をこれまで何度か取り上げていますが、これまで取り上げた課題本の多くにキリスト教が背景に隠れています。
日本にも仏教や神道があるように、それだけ日常に宗教が溶け込んでいるのを感じます。
読書会blueでは毎回読書後の感想だけでなく、課題本に関する時代背景や著者についてなどをご紹介しています。
「悲しみよ こんにちは」を読んだ際やこれから読む方の参考になりましたら幸いです。