スタインベックとハツカネズミと人間
平成31年4月7日(日曜日)9:30〜
高志の国文学館にて[読書会blue]第16回「ハツカネズミと人間」開催しました。
その際、小話として参加者にお話しした
・著者:スタインベックについて
・農業不況とは
について詳細をご紹介します。
目次
・著者:スタインベックについて
スタインベックは1902年生まれの小説家・劇作家。
ハツカネズミと人間の舞台となったアメリカ、カリフォルニア州モントレー郡サリーナス出身です。
他の著作でも故郷:サリーナス周辺を取り上げた作品を多く残しています。
裕福な家庭で育ち、両親は幼いころから畑や園芸、牛や馬などを飼育するなど自然に触れる機会が多かったようです。
20世紀初頭のサリーナスは人口2500人ほどの小麦と家畜の町。
偏狭な地方特有の考え方に対して終始良い印象は持っていませんでした。
そんな環境で成長したスタインベックですが、実は若いころ、定期的に農場で肉体労働をしていました。
今回の課題本「ハツカネズミと人間」は,定期的にサトウキビと干し草の農場で肉体労働をしていた20代はじめに目撃した「知的障害のある大男の労働者が友人が首になったことを恨んで干し草用の三つ又で監督の腹を刺した」というエピソードが基になっています。
・タイトルの由来
ところで、タイトル「ハツカネズミと人間(Of Mice and Men)」は改題されたものであったことをご存じでしょうか。
原題は「ある出来事 Something That Happened」
スタインベックがイギリス出身のロバート・バーンズの詩「To a Mouse(二十日鼠へ)」に感化されたことから「ハツカネズミと人間(Of Mice and Men)」というタイトルが生まれました。
詩の内容は農民の鋤によって住処を破壊されたハツカネズミの悲劇を詩っています。
新潮文庫版にも一部引用されています。
ロバート・バーンズの詩全文はこちら(日本語訳・英語どちらも掲載されています)
今回の課題本の主人公:
作品には多く触れられていませんが、背景には1929年アメリカから始まった世界恐慌が大きく関係し
・世界恐慌
そもそも恐慌とは、
経済が急激に悪くなり、不況という状況を超え、経済が破綻してしまう状況。
この経済的な恐慌が世界規模で起こったのが世界恐慌です。
発端は1929年9月24日ニューヨーク株式市場の大暴落でした
1930年代に入っても景気は回復せず、企業倒産、銀行の閉鎖、経済不況が深刻となり、1300万人(4人に1人)が失業。恐慌は1936年頃まで続きました。
この世界恐慌はヨーロッパ各国から日本、アジア諸国にも影響を受け、資本主義各国は恐慌からの脱出策を模索するなかで対立を深め、第二次世界大戦がもたらされるきっかけとなりました。
恐慌の要因は株式の大暴落のほかにもいくつか要因があります。が、
今回はそのなかから課題本に関連している農業不況を取り上げます。
・農業不況とは
第一次世界大戦時に食料需要が高まり、価格も上昇したため、世界的な穀物増産が行われました。
特に小麦は作付面積が増加・機械化が進んだため生産が増大し、戦後もその傾向が続きましたが1924年頃から供給過多による農作物価格が下落。
アメリカの農民は農作物価格の影響をもろに受け、耕地を手放さなければならない農民も多くいました。
農業不況は長期化。
さらに1929年は「豊作貧乏」が重なり、農民の購買力が著しく低下。
世界恐慌の一因となりました。
季節労働者として農場を渡り歩くジョージとレニーの背景には世界恐慌と農業不況という厳しい現状が広がっていたのですね。
・まとめ
ここまでスタインベックの「ハツカネズミと人間(Of Mice and Men)」関連の話をさせていただきました。
小話では取り上げていませんが、ハツカネズミと人間にはカーリーの妻やクルックスなど様々な立場の登場人物がいます。
当時の時代背景や置かれた立場などをふまえて読むのも本の世界を更に楽しめると思います。
あなたの読書を更に豊かにするきっかけとなれば幸いです。