第12回読書会blue開催レポート

平成30年8月26日(日曜日)9:30〜

高志の国文学館にて[読書会blue]第12回「夏の夜の夢」開催しました。

課題本はシェイクスピアの喜劇「夏の夜の夢」

シェイクスピアが活躍した時代の舞台を想像しながら話し合いました。

課題本を読了してからyoutubeで舞台を観た方もいらっしゃいましたよ。

 

読書会blueでは、毎回主催者より課題本に関する小話を紹介しています。

 

今回は

・シェイクスピアについて

・夏の夜の夢から見る当時の時代背景

について人物相関図を用いながら話しさせていただきました。

 

こちらの作品は元々貴族の結婚式の余興として作られたものです。

夏の夜の夢が5幕に分かれているのは当時ならではの理由が隠されていますので順にご紹介します。

・シェイクスピアについて

シェイクスピアはイングランド出身の詩人であり、劇作家として有名な人物です。

 

当時のイギリスは教会に参列することが義務化されており、シェイクスピアは幼い頃から聖書、祈祷書、説教集に馴染んでいました。

地元のグラマースクール(中世から発達した中等教育期間で大学進学の予備教育を行う機関。当時は男子のみの教育が無償で行われていた)を卒業後、1589年頃までにロンドンに渡り役者としてキャリアをスタート。まもなく劇作家として戯曲を書き始めます。

 

1594年に宮内大臣一座の株主(いわゆるオーナー)となり、劇団の経済的運営に関わるようになりました。

 

なお当時は女性のプロの役者がおらず、女役は少年が演じていました。(女性のプロの役者がイギリスに登場するのは1660年)

そのため当時の劇には女役が比較的少ないのが特徴です。

「夏の夜の夢」のハーミアやヘレナは当時、少年が演じていたんですね。

 

 

ちなみに「夏の夜の夢」は5幕で構成されていますが、これにも当時ならではの理由があります。

当時は電気がなく、そのため劇場の室内照明はシャンデリアでした。

火が消えないように時々ロウソクの芯を切る必要があるため劇作家が芝居を5幕に分けていました。

 

現在と状況が異なることがよくわかります。

ここからは課題本「夏の夜の夢」に関する時代背景をご紹介します。

 

・夏の夜の夢から見る当時の時代背景

原題はMidsummer night(夏至祭りの前夜)

夏の夜の夢はいつ書かれたのか正確にはわかっていませんが1595年に貴族の結婚式の余興として書かれた、という説が有力です。

筋書きの典拠が不明なことからシェイクスピアのオリジナル作品とみられています。

 

1626年にドイツ・ロマン派の作曲家メンデルスゾーンが付随音楽を作曲。

特に「結婚行進曲」は名高く今日の上演に欠かせないものになっています。

 

西洋では古代から夏至は神秘的な意味を持っており、夏至の前夜(聖ヨハネ祭日の前夜)には若い男女が森に出かけ花輪を作って恋人にささげたり、幸福な結婚を祈ったりする風習がありました。

 

そんな神秘的な夜は1年のなかで妖精たちの動きが最も活発になると信じられていました。(ミッドサマー・マッドネス(狂気の季節)という言葉があるくらいです)

 

なお舞台はアテネとなっていますが

実際はルネサンスが到来した当時のイギリスがモデルとなっています。

 

ここまで課題本に関する情報を共有してから読書会に入ります。

 

今回話題となったのは

「目に見えないものの存在」

 

西洋では妖精、日本では妖怪の言われがあるように古くから目に見えないものの存在は感じられていました。

当時の化学で説明できなかったことは

妖精や妖怪のせいになっていたのですね。

 

6人の職人の舞台は登場人物たちを夢から覚ます意味があったのではないか

 

妖精:パックは登場人物のなかで唯一現実と夢を行き来できる存在なのではないか

 

シェイクスピアの長いセリフは役者がセリフとリアクションで観客に役柄を伝える意味があったのではないかシェイクスピアの劇を演じた役者たちはプロ12~14名+エキストラで構成されており、そのため、登場人物が多い場合は同じ役者が一度の上演で2、3名を兼ねなければならなかった)

 

喜劇であることから当時のユーモアについての話題にもなりました。

元が貴族の結婚式の余興であるが故に堅苦しさも感じますが、当時はキリスト教の影響が非常に強く規則に縛られていた、という事情もあります。

 

ルネサンスの影響から宗教に囚われない自由な発想が長年規制に縛られたイギリスでは新しいものだったのでしょう。

 

妖精の夫婦:オーベロンとタイターニアの喧嘩も女性が現在ほど優位でなかった当時は目新しいものでした。

 

男女4人と妖精たちを巻き込んだドタバタ劇は最後、パックの言葉で物語は終わりを迎えます。

 

これまでの一連のエピソードが

夢といえるのか

実際に起こった現実なのか

夢と現実を行き来できるパックが言うからこそ物語全体を引き締めてくれるのでしょうね。

漫画「ガラスの仮面」にも「夏の夜の夢」が登場することから、そちらにも話が及びました。

主催者は未読ですが気になったあなたは見てみてくださいね。

 

参加者からは、本を手に取ったからこそ映画・演劇などほかの楽しみ方に興味を持った、理解を深めることができた、などの感想が挙がりました。

参加者の皆さん、ありがとうございました!

 

次回は10月7日(日曜日)9:30〜

課題本はロバート・L.スティーヴンソンの「ジキルとハイド」

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皆様の参加をお待ちしています。

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